北陸の寒い冬に甑で蒸し上げる
早朝、酒米を蒸し上げる蒸気が蔵から沸き立つ光景が酒蔵の冬の風物詩です。 一般にご飯は炊きますが、酒米は蒸します。甑(こしき)という大きな桶でお米 の外側はべたつかず適当な硬さがあり、内は柔らかくなるように蒸 し上げま す。その日の気温、酒米の質まで細心の注意を払って蒸す事で、麹菌が糖化作用 しやすい蒸米が出来ます。この作業は酒造りが終わる「甑 倒し」まで続きます。
人手間をおしまず、丁寧に作る
微生物である酵母は糖分を食べてアルコールと二酸化炭素に分解します。お米の 主成分はデンプンなので酵母が食べられるようにデンプンを糖化さ せます。そ の役目が麹(こうじ)です。蒸米に麹菌を均一に振りかけ、温度、湿度を最適に 調整した麹室で繁殖させます。その時、自ら熱を発する ので手でほぐす作業を 24時間体制で数日間行います。麹の良否で酒の品質が大きく左右されます。酒造 りで一番重要な作業です。
昼夜を問わず徹底した温度・湿度管理
低温下で麹、蒸し米、水をそこの浅い桶にいれて櫂ですりあわせ、手数をかけな がら乳酸の増殖、発酵を促します。手間と時間がかかります。しか しながらこ れにより、自然の乳酸菌が造られ、強酸性下で雑菌を抑えながら、力強い優良な 酵母を多量に育てる事ができます。この発酵の経過は、 雑味成分の少ないスッ キリした辛口のお酒造りに適しています。
昔から受け継ぐ木舟での搾りで越の鷹の辛口を生む
出来上がった醪(もろみ)を酒粕と酒に分ける上槽(じょうそう)の際に使う伝 統の舟です。醪を酒袋に詰めてこの槽に並べていくと醪自身の重さ で酒だけが 搾られてこの木舟の下から流れ出てきます。最初に流れ出てくる「荒ばしり」は ほんのり酸味が残って、新酒独特の初々しい香りを漂わ せてくれます。圧搾機 に比べて手間と時間がかかりますが雑味の少ない優しい味わいになります。